玄海の離島から渡る元旦の八卦
どんな伝承か
佐賀県杵島郡のある神社では、旧暦の元旦に農民の代表が参拝し、作物の占いを受ける。参拝者は佐賀県西部から長崎県北部まで十数里四方に及び、なかでも熱心なのは、船で玄海を渡り平戸口に上陸してくる離島の人々である。島で代表が決まると、その家族は名主の家に引き取られ、家には注連縄が張りめぐらされる。代表は山海の珍味と、部落で作る五穀の品種名を書いた紙を携えて神社に詣で、神社は八卦で占い、品種名の下に託宣を書き入れて渡す。代表がそれを持ち帰ると、名主の家に集まった農民の前で名主が託宣を読み上げ、酒宴が開かれるという。
原典より
神社ではこれを八卦によって占い、神の宣託を品種名の下に記して渡すと、これを押しいただいて村に帰る。—— 日本人の生活と迷信(今野圓輔・森秀男・今野圓輔・民俗学) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人の生活と迷信(今野圓輔・森秀男・今野圓輔・民俗学)
『日本人の生活と迷信』は、今野圓輔と森秀男による、現代の日本人の暮らしに残る迷信と俗信を論じた本である。文部省の迷信調査協議会が昭和二十年代に二度行った全国調査の数字を引き、十二支や丙午、日の吉凶、家相、厄年、まじない療法、食い合わせ、農作業の禁忌、幽霊・妖怪・河童・憑きもの、便所神や道祖神などを取り上げる。迷信の種類と分布に始まり、医薬、暦と方角、農村、前兆・予知、妖怪、神々と信仰の順に説く。