洪水で流れ着いた杉の仁王様
どんな伝承か
会津の五桜の一つ、杉の糸桜のある薬師堂は、部落の西の小高い見晴らしのよい所にある。境内に登る石段の中ほどに仁王門があり、いかめしい仁王様が睨みをきかせている。この仁王様は、昔の大洪水の時に川上から流されて来て漂着し、仮の宿がいつしか永住の地になったという。天文五年六月二十八日の大洪水まで、仁王様は田子薬師への登り口に鎮座していたが、濁流に押し流され、東風に乗って川下の杉村に漂着した。杉の人々は泥を洗い落として薬師堂の境内の入口に祭った。新屋敷の村人が返してほしいと交渉に来たが、杉村の人々は自分の村に授かった仏だとして応じなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
会津坂下町史 1(民俗編)――伝説(会津坂下町(編・山口弥一郎ほか)・会津坂下町史)
『会津坂下町史 1(民俗編)――伝説』は、会津坂下町の町史民俗編のうち、第二十章「伝説」を収めたものである。高寺山の黄金千杯、佐原・栗村の水田開発、交通路、空也・徳一、神仏、地名、雨ごい、狐、笑い話・逸話、妖怪変化、部落の起源、人物にまつわる町内の伝説を集める。冒頭で伝説の意義と自然・歴史・信仰の三分類を述べ、主題別の節に分けた各話の末尾に話者と、井関敬嗣・薄嘉明ら執筆者の名を記す。