三吉神に大力を授かった横車の大八
どんな伝承か
羽後の国、南秋田郡五城目町の産で、横車の大八という力士がいた。貧しい家の生まれで、若年の頃は近所の豪家に奉公していた。あるとき主人の言いつけで年貢米を車に積み、秋田の町の殿様の城へ引いて行くと、御米倉の前坂で車が地面に吸い着いたように動かなくなった。そこへついてきた一人の童子が小指を梶棒に引っ掛け、空車のようにからからと坂を引き上げてみせた。驚いて名を問うと、童子は真の大力が欲しければ夜密かに太平山に来て籠れと告げ、掻き消すように消えた。郷土に名高い三吉神である。大八は真裸で太平山の三吉神社の籠堂に七日七夜籠ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・大正・昭和(東北民俗))
『遠野物語』の語り手・佐々木喜善が大正昭和期に郷里岩手で採集した東北の昔話・伝説の集成。冒頭の『奥州のザシキワラシの話』では、旧家の座敷に出没し家の盛衰を司るザシキワラシの諸相を集める。『江刺郡昔話』『紫波郡昔話』に続き、『東奥異聞』では不思議な縁女の話・黄金の牛・磐司磐三郎・千曳石・赤子抱き・偽汽車など奇譚を収める。