犬の命と引き替えに伝わった麦の種
どんな伝承か
旧暦十月十日はトオカンヤと呼ばれ、犬を供養する日とされている。弘法大師が中国に渡ったとき、農家の庭のむしろに広げられた麦の種を初めて目にした。あまりの珍しさに、いけないと知りながらひとつかみを取り、携えていた竹の杖の上のほうに隠して、何食わぬ顔で立ち去ろうとした。ところが犬が吠えだして止まない。出てきた飼い主に問われても大師は何もしていないと言い張ったので、飼い主は犬を棒で打ち殺し、疑ったことを詫びた。こうして犬の命と引き替えになった麦の種が日本の麦になったといい、その犬を弔うため十日夜にはボタモチを供えるという。
原典より
その時盗んだ麦種子が、犬の命と引き替えに日本の麦となったという。—— 北本市史 第6巻(民俗編)――伝説(北本市(編)・北本市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
北本市史 第6巻(民俗編)――伝説(北本市(編)・北本市史)
『北本市史 第6巻(民俗編)――伝説』は、北本市の市史民俗編のうち、第十一章「伝説・世間話・昔話・諺」の冒頭部分である。章の「はじめに」で四者の性格を説いたのち、第一節「伝説」に蒲桜・龍灯杉・一夜堤や多くの塚の伝承、送りオオカミ・河童・禁忌動物、おたきあげ・十日夜の由来など四十二項目を収める。多くの項目は見出しに石戸宿・高尾などの伝承地を添え、話者名や「埼玉県伝説集成」などの出典を▽で示す。(197字)