蹄鉄屋のじいさんの『おお深い』
どんな伝承か
蹄鉄屋のじいさんが、昼休みにキノコとりに行くといって前の山へ出かけた。まわりは麦畑で、本人は山へ入ったつもりだが、実は畑の中を押し歩いていた。見ると着物をみな脱いで頭に縛りつけ、「おお深い、おお深い」と言いながら歩き回っていたという。隣のじいさんが西の家へ寄り込んで「おれんちはどこへ行ったらよかんべ」と聞き、その家のばあさんに「ねぼけるな」と叱られて「おー、気がついた」と言ったという話もある。いずれもオトカ(狐)に化かされたのだという。小雨の降る晩には田のくろにちらちらと点いたり消えたりする灯が見え、列になったりシャンシャン音がするともいわれた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
千代田村の民俗――伝説・世間話(群馬県民俗調査報告書 第14集・群馬県民俗調査報告書)
『千代田村の民俗――伝説・世間話』は、利根川沿いの千代田村で行われた民俗調査の報告のうち、言語伝承の章を中心に収めたものである。赤岩・舞木・瀬戸井・福島などで聞いた長良神社や赤岩城、片目の白蛇、カクレザト、河童の伝説と、オトカや狐に化かされた話、大食・大力・変わり者の世間話、諺や洒落を、大字名を添えて短く記す。冒頭に正月の松飾りと大晦日の行事の断片を置き、言語伝承の「はじめに」に続けて伝説・昔話・諺洒落の三節を並べる。