稲荷の前でうろつく
どんな伝承か
取手市寺田の男が、まだ学校に通っていたころの話である。父と二人で稲荷様――今の東観団地内にある稲荷公園――の前を通りかかったとき、父が「おれはちょっと用があるから、おまえは先に帰っていろ」と言った。父は佃の方へ用足しに向かい、男は家へ帰るつもりで歩き出した。ところが本人はそのつもりでいながら、実はまだそのあたりに留まっていたらしい。用を済ませて戻ってきた父に「なんだ、まだここにいるのか」と言われ、そこで初めてはっとした。狐に化かされて、稲荷様のところをうろうろしていたのだと思ったという。
原典より
親父が戻ってきて、『なんだまだここにいんのか』って。—— 取手市史 民俗編2――将門伝説・怪異(取手市(編)・取手市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
取手市史 民俗編2――将門伝説・怪異(取手市(編)・取手市史)
『取手市史 民俗編2――将門伝説・怪異』は、取手市の市史民俗編のうち、俗信の箇条の末尾に続く第四節「伝説」・第五節「不思議な話」・第六節「祟り」を収めた部分である。市内各地区での聞き取りを話し言葉のまま書き起こし、長い四話は『取手町郷土史資料集 第一集』から抜粋する。将門と桔梗御前の伝説、地蔵・社寺・樹木の伝説、狐やムジナ・化け猫・幽霊・タマセの話に続き、忌田や祟り山の話を所有者名と地区を伏せて載せる。