焼石を食わされた行者山の山爺
どんな伝承か
高知の山中には山爺の話がことに多い。香美郡物部村の中尾家では、祖先が行者山で山爺に出会い、タカキビの種をもらって山畑に蒔いたところ大豊作になった。その年の暮れの二十八日、山爺が餅をねだりに来たので腹いっぱい食べさせ、以来毎年もてなすうちに、ついには一度に三斗もの餅を平らげるようになった。このままでは家がつぶれると考えた家人は、ある年の暮れに焼いた川原石を山爺の口へ押し込み、茶だと偽って荏胡麻の油を飲ませた。喉を焼かれた山爺は行者山へ逃げ帰る途中、臼の谷で死に、栄えていた中尾家も一気に衰えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年))
『暮しの中の妖怪たち』は、岩井宏實が昭和六十一年に著した妖怪の概説書である。鬼・天狗・河童から山姥、産女、雪女、怪火、ザシキワラシ、化け猫、狐狸、幽霊まで、各地の伝承や古典・絵画に見える妖怪を一つずつ取り上げ、その姿と仕業を説く。第I章で個々の妖怪を紹介し、第II章で妖怪の性格、出現の空間と時、正体を論じ、巻末に著者が資料とした妖怪の本の一覧とあとがきを置く。