海底で笑う自分と同じ姿の共潜ぎ
どんな伝承か
志摩の海女がもっとも恐れる妖怪が「共潜ぎ」である。曇天の日に海に潜ると、自分とまったく同じ容姿・同じ服装のものが海底をはってきてニヤリと笑う。鮑をくれたり、手を引いて暗いところへ誘い込もうとするといい、仲間だと思ってついて行くと潜水時間が延びて窒息するという。浮き上がってあたりを見回しても自分の舟以外は何もない。共潜ぎと分かって鮑を差し出されたときは、後ろ手に受け取れば安全だという。これを見た海女は以後めったに潜らず、近村の海女も二、三日は日待ちをして遠ざかるのを待った。
原典より
志摩の海女にとってもっとも恐ろしい妖怪が「共潜ぎ」である。—— 暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年))
『暮しの中の妖怪たち』は、岩井宏實が昭和六十一年に著した妖怪の概説書である。鬼・天狗・河童から山姥、産女、雪女、怪火、ザシキワラシ、化け猫、狐狸、幽霊まで、各地の伝承や古典・絵画に見える妖怪を一つずつ取り上げ、その姿と仕業を説く。第I章で個々の妖怪を紹介し、第II章で妖怪の性格、出現の空間と時、正体を論じ、巻末に著者が資料とした妖怪の本の一覧とあとがきを置く。