灯心を一本ずつ消す百物語の座敷
どんな伝承か
本郷は駒込曙町の狭い小路の奥に、世外庵の額を掲げた草の庵があり、八十余りの世外居士が住んでいた。居士は門下生に、徳川時代には胆力を鍛えるため百物語をやったと語る。秋の淋しい座敷に行燈を置いて百筋の灯心を点し、籤の順に自分の経験や恐ろしかった妖怪話をしては、その座敷へ行って灯心を一本吹き消す。終りに近づくほど光が薄れて四辺が薄気味悪くなり、最後には必ず妖怪が現れると決まっているという。折から細かい秋雨が降る夜、三十六人が集まって開筵となった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
実説妖怪新百話
『実説妖怪新百話』は、著者名の記されない明治の怪談集である。本郷駒込曙町の世外庵に住む天保初年生まれの老翁の勧めで、門下生三十六人が百物語の会を開き、武家の妻の執念、化物屋敷、狐狸の化かし、前妻のたたり、漁師の幽霊の帰宅などを、自分の見聞や親から聞いた話として順に語る。冒頭の「百物語の開筵」で会の趣向を述べ、続いて会津・三河・江州・若狭・盛岡・八戸などを舞台にした話を題ごとに並べる。