百物語を邪魔された化け物の風邪薬
どんな伝承か
怪談咄を百やると化け物が出るという。江戸の末ごろ、薬王寺の本堂に若い者たちが集まって百物語をすることになった。臆病者ほど化け物の話を好む。佐々の屋敷に口の大きな女の亡霊が出るという話から始まり、次々と語り継いでいったが、和助は八十六話まで来たところで突然話を変え、鹿野の屋敷の娘のことを喋りだした。若者たちは化け物より娘の話に夢中になった。和助が家に戻ると、一つ目小僧、ノッペラボウ、下駄、笊などの化け物がぞろぞろと出てきて、皆でくしゃみをし、百の話が終わったら出ようと待っていたのに出そびれ、風邪までひいた、風邪薬をよこせと言った。和助は化け物たちに風邪薬を取られたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。