地蔵を憑ける女の子の託宣
どんな伝承か
福島県磐城地方の、海寄りの浜通りと内陸の中通りの中間にあたる山間の諸部落では、明治末年から大正初期にかけて「地蔵遊び」が盛んに行なわれていた。なかでも地蔵菩薩の尊霊を女の子に憑依させ、部落の命運や個人の禍厄を託宣させる方式を、とくに「地蔵憑け」と呼んだ。輪の中央に一人を入れて笹の小枝や御幣を持たせ、周囲の者が「南無地蔵大菩薩、お乗りゃあれ」と繰り返し唱えながらぐるぐると廻る。やがて手にした笹と御幣が動きはじめ、人々は地蔵の尊霊が憑いたしるしとみて、家運や病、出稼ぎに出た家族の消息などを問いただしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂観の系譜――歴史民俗学の視点(桜井徳太郎・桜井徳太郎・歴史民俗学・1977年(昭和52年))
『霊魂観の系譜――歴史民俗学の視点』は、桜井徳太郎が一九七七年(昭和五十二年)に著し、筑摩書房から刊行した論文集である。昭和三十二年から五十年にかけて学会誌や雑誌、新聞に発表した論考を収め、民俗学と歴史研究の関係、郷土の民俗像の史的復元、古代のシャマニズムと憑霊、呪いの人形、怨霊から御霊への死霊観を論じる。後半で折口信夫の巫女観と柳田国男の祖先観を検討し、巻末にあとがきと初稿発表覚書を付す。