猪苗代湖で天神の怒りを言われた抜け参り
どんな伝承か
大正十五年ごろのこと。猪苗代湖をはさんで、湖南の村の鎮守は藤原時平を、湖北の小平潟天神は菅原道真を祭神とする。湖北の天神の夏祭りは会津地方や中通りからの参詣で賑わったが、湖南の村から行くと天神が後ろを向くので学問の願いは叶わないといわれていた。それでも行きたい小学六年生たちは夜明け前に二十キロの湖岸道を抜け参りした。帰りは足に豆ができて汽船に乗ったが、小平潟港を出て湖心にかかると一天にわかに曇り、波が高くうねり出した。船乗りは船室に来て、この中に館の子めらが乗っているな、天神様が怒っている、船が沈んでも知らぬぞと散々に叱りつけたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成)
松谷みよ子『現代民話考 ― 偽汽車』を小話単位で全525話収録。汽車・船・自動車などの乗り物にまつわる現代の民話・怪談を全国から採集。狐狸が汽車に化ける偽汽車、船幽霊、タクシーに乗る幽霊などを地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明359話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。