沢蟹を焙って食う磐梯山の山ワロ
どんな伝承か
会津領耶麻郡の磐梯山の西北の谿は薬草を多く産し、なかでも川芎がよいという。山下の村民は農事の暇に山を攀じてこれを採った。文化の初年、村民二人が深く奥山に入って出られなくなり、谿のそばの大木の虚洞で夜を明かそうと、穴の辺りで火を焚いていた。すると谿の中から出て来る者があった。その姿は猿のようで唇が長く、丈は六尺ほど、女人の姿に似て髪は六尺余り、およそ踵を隠すばかりであった。二人を見て笑い、その凄さは言語に絶した。やがて火の傍に寄り、捕らえて来た沢蟹を焙って食ったという。俗にいう山ワロで、野猿の年経たものだと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第4巻』を全822話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。