後妻を取り殺した先妻の鬼女
どんな伝承か
青木秀三郎の後妻おたへは、先妻おるいの死霊に毎日毎夜つめかけられた。死霊は是非とも後妻を取り殺して妄執を晴らそうとし、そのあさましさは筆にも言葉にも尽くせぬほどであった。姑はこれを苦にして病み、夫婦の安寧のためにと一日一万遍の念仏を欠かさなかったが、おたへの病は日ごとに重くなる。臨終の際、おたへは秀三郎に、自分が死んだ後は決して後妻を迎えてはならない、迎えれば家が滅ぶと言い残した。死霊は、後妻を添えるなら千人まで冥途へ引きずってゆくと恐ろしい形相で座敷を駆けまわったという。おたへは念仏ばかりを唱え、二十歳で世を去った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
実説妖怪新百話(明治期(明治9年~明治18年の事例を含む、編纂は明治中後期と推定))
『実説妖怪新百話』は江戸時代から明治期にかけての怪談・心霊現象を記録した実例集である。本書の主要なテーマは、嫉妬・怨念・執念による死霊の祟り、狐や狸による化かしと報復、そして不幸な死を遂げた者による因果応報である。特に注目される点は、妻の虐待や後妻問題に関連した怨霊現象が多数記述されていることで、嫉妬による執念がいかに強力な超自然力となるかが繰り返し示唆されている。