五寸釘を打たれた蝦蟇の吐く怪光
どんな伝承か
明治二十八年のこと、会津若松の上市町にあった書肆龍田屋の主人が、夏のある夜に外出先から帰ると、納屋と倉庫の間の狭い路地の地面から、探照灯を差し向けたような淡い一筋の光が立ちのぼり、倉庫の白壁を照らしていた。怪しみながら中へ入ると、光は地面の一点から発しており、そこには大型の蝦蟇がいて、光はその口から吐き出されていた。蝦蟇の背には子供の悪戯らしい五寸釘が刺してある。折しも家では八、九歳の息子が高熱で医療を受けている最中だったので、主人は病因は蝦蟇の一念だろうと察し、恐れてただちに釘を抜き、詫びを言って庭の安全な場所へ放してやった。すると怪光もやみ、息子の病気も快癒したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・昭和初期(1927))
心霊研究家・岡田建文が昭和二年(一九二七)に著した『動物界霊異誌』。現代物理は宇宙の大物理の末梢に過ぎぬとの立場から、動物の霊異を迷信的虚妄として退けず証明すべき事例として収集する。蝦蟇(ヒキガエル)の章では、蛇を埋めてクリ茸を生やし食う怪(島根波根東村)、背に五寸釘を刺され口から怪光を吐く大蝦蟇(会津若松龍田屋、同時に幼児が高熱)、猫を灰色の液汁に溶かす怪(石見久利村)、慶応二年に浄土寺へ夜ごと現れた武士の正体が蝦蟇だった話を収める。