猫を溶かして蝿を集める蝦蟇
どんな伝承か
石見国大田町の南に接する久利村の、屋号を柿の木という農家での出来事。主人が客と話していると、隣家から来た猫が庭の柿の老木に駆け登り、何もいない下をにらんで背を丸め、四肢を突っ張ったまま動かなくなった。やがて猫の全身から灰色の液が際限なく垂れて地面で大皿ほどの塊になり、猫は痩せ細って木から落ちた。そこへ大きな蝦蟇が這い出して塊に土をかぶせると、汚い団子のようなものが生え、寄ってくる蝿を四、五十匹も食べて悠々と去った。猫は骨と皮ばかりになっていた。見たのは今は亡き刃物鍛冶の美濃嘉七という。
原典より
後に人々は出て見るに、猫は骨と皮ばかりになつて居たと云ふ。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。