蛇を埋めて茸を生やす蝦蟇
どんな伝承か
明治三十年の夏の昼過ぎ、島根県安濃郡波根東村で、産土神の八幡社に続く砂丘の松原に大勢が集まり何かを見物していた。通りかかった小学校長の板倉氏が訳を聞くと、五寸ほどの蝦蟇と一尺五、六寸の蛇が長いこと争い、蛇が巻き付くたびに蝦蟇は腹を細めてするりと抜け、やがて蛇の方が弱って伸びてしまったのだという。蝦蟇は蛇に砂をかけて埋め、その上に陣取っていた。間もなく塚から茶色い茸のようなものが見る見る伸び、蝦蟇はそれを次々に頬張った。校長は結末を見ずに立ち去ったと著者に語った。
原典より
やがて蛇の塚から茶褐色のクッ茸めいたものが生へ出したが、質に迅速に生長し、見るまに五分となり一寸となると、墓が其をバクリと頬張つて喰ふ。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。