狐持ちはにわか財産家
どんな伝承か
石州安濃郡の某村では、狐持ちの家はかなりの財産をもつ者ばかりで、もとは貧乏だったのが急に財産家になったのだという。その家に狐が憑くと資産家になるという言い伝えがあるのだ。ただし資産家になっても、筋のために婚姻を結ぶことはできない。狐持ちが狐を捨てようと思えば、家の財産をすべて売り払って金に代え、その金を少しも使わず、そっくり人通りの多い往来に捨てておくと、家の狐は皆その金について逃げてしまう。その代わり、その金を拾った者の家が狐持ちになり、たちまち財産家になるという。つまり狐は家に憑くのではなく、その家の財産に憑くらしい。
原典より
自分の村(石州安濃郡某村)では狐持ちはかなりの財産あるものばかりで、元は貧乏であったのが、急に財産家になったのだという—— 怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。