足音が絶えて衰えた今渕家
どんな伝承か
遠野の土渕村字飯豊に、今渕某という旧家があった。この家には昔からザシキワラシがいるとの言い伝えがあり、座敷の床の間から二枚目の畳の上には、夜寝られる者がないともいわれていた。分家の某という人の母親は、夜中に座敷をとたとたと歩く足音をたびたび聞いたという。その足音が、宵から夜明けまで、ちょうど二、三人の子供が何か遊戯でもしているように、入り乱れてすることもあった。そんな音が聞こえるうちは家も繁昌していたが、二十年このかた足音がしなくなった。それからは若い主人が死に、数々の不幸が起こって、家はすこぶる衰えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。