堂突きに来た大病の父のオマク
どんな伝承か
遠野地方では、生者や死者の思いが凝って歩く姿が幻となって人の目に見えるのをオマクという。土淵村の中央、役場や小学校のある字本宿に豆腐屋を営む政という者がいた。その父が大病で死のうとするころ、村と小烏瀬川を隔てた字下栃内の普請で地固めの堂突きをしていると、夕方に政の父が独りで来て人々に挨拶し、自分も突こうと言ってしばらく仲間に入って働き、暗くなると皆と共に帰った。大病のはずなのにと不思議に思っていたところ、その日に亡くなったと後で聞いた。人々が悔みに行ってその話をすると、時刻はちょうど病人が息を引き取ろうとするころだったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。