毎夜娘を誘いに来る亡父
どんな伝承か
遠野の六日町あたりに、父と娘のふたり暮らしの家があった。父親が死に、その葬式を出した晩から、毎夜のように死んだ父が娘のところへ現れ、一緒に来い、来いと呼びかけた。娘は恐ろしがって親類や友達に泊まってもらったが、それでも父は来て責め続け、とうとう娘は病みついてしまった。夜になると町内の若い者たちが部屋に詰め、刀を振りまわして守りを固めた。すると父親は二階裏の張板に取りついたまま、娘の方をじっと睨むように見ていたという。こんなことが一月ほど続いたのち、ようやく現れなくなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。