炭取を回した曾祖母の幽霊
どんな伝承か
『遠野物語』には、髪を振り乱して山深く走り去る女やザシキワラシなど、多くの〈もの〉が登場する。著者はその第二十二話を引く。佐々木氏の曾祖母が年老いて死に、棺に納めた夜、親族は座敷で寝た。喪の間は火の気を絶やすことを忌む土地の風なので、祖母と母の二人だけが囲炉裏の両側に座っていると、裏口の方から足音がして、亡くなった老女が入って来た。裾を三角に縫い付けた着物も縞目も見覚えのままで、二人の脇を通るとき裾が炭取に触れ、丸い炭取がくるくると回った。離縁されて戻っていた狂女が声を上げる。著者は、この炭取の回転こそ現実と超現実をつなぐものだと説く。
原典より
* 十二 『聴耳草紙』の生き返った男女* 十三 〈〈昔ばなし〉〉の子育て* **第四章 幽霊の系譜〈能・歌舞伎の発生と展開〉*** 一 能の幽霊たち 『船辨慶』の知盛* 二 歌舞伎の幽霊たち 『四谷怪…—— 日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)
『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が著した日本文学の幽霊論である。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『今昔物語集』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じたのち、物語・説話・能と歌舞伎・近代の章を立て、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。