土蔵で機を織る音
どんな伝承か
上郷村(遠野)字中沢の菊池鳥蔵という家では、四、五年ほど前から土蔵の中で、何ものかが機を織る音をさせるという。鳴るのはきまって夕方から初夜にかけての刻限であった。この家に奉公していた同じ村の善能寺の菊池某という若者は、その音なら先日も夕方からしきりに鳴っていた、なんでもない、ザシキワラシだよ、と事もなげに言ったそうである。佐々木喜善が書き留めた遠野の話で、機を織るところからこのワラシは女だろうと語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。