土間で相撲を取る狐持ちの家の人狐
どんな伝承か
島根県能義郡では、人狐はイタチに似て体が細長く、色は茶褐色で尾が長く、後ろ足で立ったり手をかざして見たりする癖があるという。月夜の晩に小川をぞろぞろ渡って主人の屋敷へ入るのを見た、秋の田でイナゴを追い回す三十匹の人狐を見た、という話がある。また、ある狐持ちの家の前を通ると七十五匹の眷属が屋根の棟に上って招いていた、日が暮れて見知らぬ一軒家に泊めてもらうとそこが狐持ちで、夜中にたくさんの狐の子が出てきて土間で相撲を取って見せた、とも言い伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。