色事を口走った女と祈禱師の見た白狐
どんな伝承か
昭和二十三年十一月の中ごろ、島根県仁多郡のある村で、当時三十二歳の女性が急に頭痛を訴えた。大峰山系の祈禱師を呼んで加持祈禱を受けると、誰の目にも見えなかったが、祈禱師は自分の前に白狐が現れたと言った。数日祈っても病人の身震いは止まらず、家族も聞いていられないほど色事を口走った。二十日ほどして祈禱師の懸命の祈りで狐は退散し、女性はいまは二児の母として元気に働いているが、世間では人狐のしわざだったと言い伝えている。松江地方法務局の調査資料に報告された実例である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
講座日本風俗史別巻 妖異風俗((講座日本風俗史 別巻)・日本風俗史・民俗)
『講座日本風俗史別巻 妖異風俗』は、『講座日本風俗史』の別巻として、複数の執筆者が妖しく異様な風俗を論じた巻である。淫祠と性の祭礼、戦後の新興宗教、性にまつわる迷信、妖術・忍術・奇術、憑きものと特殊家系、心霊術と催眠術、異類との婚姻、性と怪異の関わりを、古典の随筆や各地の報告、事件の記録から取り上げる。九つの章に分け、終章「日本妖異風土記」では関東から九州・沖縄までの怪異譚を地方別・県別に掲げる。