桑畑で蛇に眠らされた娘
どんな伝承か
数年前、出雲国仁多郡八川村で、養蚕をする農家の女房が妙齢の娘と二人で山畑へ桑摘みに出かけた。母子が少し離れて摘んでいるうちに娘の姿が見えなくなったので、母親が探しに行くと、娘は柿の木の根元で肱枕をして眠っており、その頭上五、六尺の枝に四尺ほどの蛇がいて、首を伸ばして娘を見入っていた。母親は土塊を投げつけて蛇を追い払い、娘を呼び起こして連れ去った。娘は、桑を摘んでいるとむやみに眠くなったので、わざわざ柿の木の下へ行って寝たのだと語ったという。
原典より
娘は桑摘みをして居るとむやみに睡くなったので、わざに柿の樹の下へ て寝たのだと云ふ。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。