榎の神木を伐って急死した汁粉屋の主人
どんな伝承か
浅草の金竜山浅草寺の境内に北村という汁粉屋があり、その裏手に年を経た榎の大木が立っていた。幹の半ばが朽ちて小蛇の巣となっており、近所ではこれを宇賀神の神木として敬う者も多かった。ところが蛇が枝を伝って庭へ下りてくるので、家人は気味悪がる。主人は伐ってしまおうと近所の修験者に相談したところ、神木ゆえ祟りがあるかもしれぬから加持祈禱をしてからにせよと言われ、祈禱を済ませたうえで枝を伐り落とさせた。するとその夜から主人は急な病に倒れ、十日あまり患って死んだ。近所の人々は神木の祟りだと噂しあったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。