西行が東大寺で見返った松
どんな伝承か
北葛飾郡杉戸町下高野の東大寺に伝わる西行見返の松の話は「東大寺縁起」に詳しい。文治二年、鎌倉で頼朝に和歌の道を伝えた西行は、奥州の藤原秀衡を訪ねる途中でこの地を通った。初冬で雪は一尺余り積もり、粗末な食事と旅の疲れから体を痛め、ようやく草堂にたどり着いたものの、夜はひどい痛みに苦しんだ。村人の介抱で回復すると、里人は引き留めて教えを請い、去るなら木像を残そうとした。西行は円位の号を持つ身が穢土に偶像を残せぬと怒って像を投げ捨てて発ったが、庭先の松を梢が見えなくなるまで何度も振り返ったという。今も木柵に囲まれた見返松と歌を刻んだ石柱が残る。
原典より
西行見返の松については「東大寺縁起」にくわしい。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。