咽喉の孔で吹矢を吹く浅草奥山の芸人
どんな伝承か
春のころ、浅草寺の裏手にあたる奥山の見世物場に、山丸直蔵という芸人が出ていた。この男の咽喉には孔が一つ開いており、そこへ息を通して笛を鳴らし、煙草をくゆらせ、さらに吹矢を放って狙いどおりに的を射てみせた。口に筆をくわえて字を書く芸もあって、評判は高かったという。報じた読売新聞は記事の末尾に、体が不自由でも心がけ次第で人並み以上の芸が身につくのだから、何より勉強が肝心だと説教めいた一文を添えている。当時の新聞が世間の出来事をいちいち勧善懲悪に結びつけたがった気風がうかがえる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方編著・日本怪奇集成・昭和初期(推定昭和2-3年))
明治・大正・昭和の怪奇譚(日本怪奇集成)/生首と幽霊の怪/狐狸のいたずら/怪盗と世相の怪異/各時代の不思議な事件