美保関に突風を呼んだ件の剥製
どんな伝承か
明治二十五年、来日三年目のラフカディオ・ハーンは近畿から山陰各地を訪ね、その体験を『知られぬ日本の面影』に収めた。うち「伯耆から隠岐へ」の一節に、隠岐へ渡る汽船が島根半島東端の漁港・美保関にさしかかった折、同乗の友人が語った話が出てくる。大阪から境に来ていた旅芸人の一行が、虎など珍しい動物とともに件の剥製を携えて美保関行きの出雲丸に乗ったところ、汽船が港に入った途端に突風が襲った。神主たちは、死んだ獣の骨や身体の一部という不浄なものが町へ持ちこまれたために神が怒られたのだと言い、見世物の一行は上陸を許されなかった。船が去ると、たちまち空は晴れ、風も止んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪伝説奇聞(東雅夫・2005年(平成17年))
『妖怪伝説奇聞』は、東雅夫が二〇〇五年に学習研究社から刊行した妖怪伝承地の探訪記である。稲生物怪録の木槌、クダン、牛鬼、塵輪、ナメラスジ、八幡の藪知らず、鬼の骨、蛇骨、鍋島の怪猫、児啼爺などを追い、中国・四国・九州ほか各地の寺社や旧家を訪ねて遺物と伝承を確かめる。月刊誌「ムー」の連載「日本伝説紀行」の十二章を三つのカラーグラビアで区切り、巻末に草双紙『鍋島猫騒動』の復刻を添える。