小便をかけた子を罰した屋敷跡の石
どんな伝承か
松江の内中原町の旧藩士の屋敷跡の麦畑に、しめ縄を張った高さ五尺ほどの自然石が立っていた。大正九年のある日、著者が何気なく石に手を当てて眺め、立ち去ろうとすると、急に体がだるくなり熱っぽさを覚えた。不敬を咎められたと察して邪気払いをすると元に戻った。のちに畑の借主の出口某に尋ねると、屋敷は寛永のころ加藤清正の侍医久城春台が松江侯から賜った地で、石はその頃からあり、庭石に買われても運び出そうとすると怪我人や病人が出て動かせず、毎年神酒を供えているという。つい先日も、泊まりに来た親類の六歳の男の子が高熱を出し、稲荷に伺うと石に小便をかけた祟りと言われ、本人に問うとその通りだったと語った。
原典より
石は各方面から庭石として買受けられるけれど、イザ搬出となると、怪我人が出来たり病人が出来たりして、どうしても場所を動かぬ。—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談)
『幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵』は、岡田蒼溟による霊怪の事例集である。祟る石、出雲の瀧姫行者、神西湖の妖怪、但馬の抜け首、黄金の精、海の牛鬼、天狗などの怪異を、著者自身の見聞や知人の談話、古い文書からの移載によって集め、明治・大正期の出雲や松江周辺の事例を多く含む。項目によっては【解題】や註を添え、事例の後に「第二編」と附録の「天狗考」を続け、巻末の「解説の欄」で生霊・疫神・物体の飛来などを心霊研究の立場から論じる。