従五位の小者が招いた位負け
どんな伝承か
明治維新の一、二年前、松江藩の小者岡田屋善五郎は京都勤番中に遊びで刻限に遅れて出奔し、中山大納言家に奉公したのち御所の水汲みに推されて従五位を賜った。窮屈さに嫌気がさして辞め、帰郷の途中、津山の外れの荒神の木に、従五位の身だと威張って小便をかけると蛇がそれをなめた。松江で武家屋敷の畑仕事に雇われると、行く先々で人が急病になり、修験者は位の高い者が来ているための位負けだと告げた。善五郎は旅費を集めて京へ上り位を返し、その後は病人も出なくなったという。
原典より
スルト修験者が、是は位の高い人が來て居るので、位負けをして病気になったのだと言つた。—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談)
『幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵』は、岡田蒼溟による霊怪の事例集である。祟る石、出雲の瀧姫行者、神西湖の妖怪、但馬の抜け首、黄金の精、海の牛鬼、天狗などの怪異を、著者自身の見聞や知人の談話、古い文書からの移載によって集め、明治・大正期の出雲や松江周辺の事例を多く含む。項目によっては【解題】や註を添え、事例の後に「第二編」と附録の「天狗考」を続け、巻末の「解説の欄」で生霊・疫神・物体の飛来などを心霊研究の立場から論じる。