空を唐箕の雲が通った通りもん
どんな伝承か
長野県下水内郡栄村屋敷での話。話者の実家の父・善吉が、小赤沢の文五郎と二人で檜俣へ兎とりに入った。空はまっ青で申し分のない天気だったが、並んで歩いていると、遠くから飛行機のようなドンドンという大きな音が近づいてきた。「あれは何の音だ」と言ううちに空はいちめん曇り、唐箕に似た形の雲のようなぼやぼやしたものが、ものすごい勢いで音を立てながらシューと通り過ぎた。二人はあおられて吹き飛ばされ、文五郎は向こうへ投げられ、善吉もつんのめって倒れ、それが通り過ぎるまで頭を上げることができなかった。昔の者はこれを「通りもん」が通ると言ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。