天狗に飛剣を授かった万騎の峰
どんな伝承か
伊具郡丸森町廻倉の立石屋敷に、佐藤松吉の子で武芸好きの理八という者がいた。家が貧しく館矢間村の豪家に奉公しながら、二里の夜道を通って同村の剣道指南高木与惣兵衛のもとに一晩も欠かさず稽古に通った。二十歳の頃には同門で理八に勝つ者がなくなったが、目録は与えられなかった。理八は自分の未熟を悟り、毎夜、万騎の峰の中腹にある俗称天狗の宮へ通って剣の工夫を凝らした。夜道には山犬や美しい女や飛ぶ生首が現れたが恐怖に打ち克ち、百七晩目の丑の刻、現れた天狗に掴まれて谷向かいの天狗の角力場へ投げられ、投げ返される間に飛空の術を会得したという。のちに天狗尊を祀り、藩公から「飛剣」の名を与えられた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。