出雲の田のわきで聞いた狐持ちの話
どんな伝承か
島根県出雲市斐川町神庭で、著者は荒神谷遺跡を見た足で東隣の宇屋谷を訪ね、県道近くの田のわきで草を刈っていた昭和十八年生まれの男性、樋口勉(仮名)から話を聞いた。男性は、この辺りでは今も「狐持ち」ということが言われ、どの家がそうか年配の者はおおよそ知っており、その家への結婚差別も消えていないと語った。狐持ちはカワタやハチヤより上だが、一般の家からは低く見られてきたという。狐持ちの家は普通より小さい「人狐」を飼い、恨んだ相手に憑けると信じられた。憑かれた者は病や心の乱れ、財の損失に見舞われて自らも狐持ちになるとされ、周囲は近づくことさえ恐れ、縁組みを拒んだ。
原典より
「結婚のとき問題になる」土佐の犬神筋犬神落としで知られる神社遅くとも中世には語られていたおわりに—— 村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。