復員した息子に障ったオバの死霊
どんな伝承か
出雲市のS部落で会った神官のY老人が語った話。当時四十三歳の息子が戦後に復員して間もなく、死んだオバ(老人の母の姉妹)の「サワリ」で腰が痛くなった。病院で治療を受けても三年間治らなかったので、〈うかがい〉をたてて占いで神に尋ねたところ、死んだオバのサワリだと分かった。このオバは巡査と結婚したが子がなく、養子を何度も迎えたが長続きせず、夫婦とも年をとって中気になり、子のないことを嘆きながら食べる物にも不自由して死んだ。それで死んだあと息子にサワッたのだという。老人は、生霊・キツネ・死霊などが憑くのがサワリだと説明した。
原典より
* 祖霊と親族* 憑く憑かれるの関係* 社会的潤滑油* 家単位の憑きもの現象* イギリスの妖術との比較* 憑く人の特徴(日本)* 憑く人の特徴(外国)* 憑かれる人の特徴—— 日本の憑きもの(吉田禎吾・民俗・憑きもの研究・1972年(昭和47年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの(吉田禎吾・民俗・憑きもの研究・1972年(昭和47年))
『日本の憑きもの』は、吉田禎吾が一九七二年に著した人類学の研究書である。キツネ・イヌガミ・オサキなどの憑きもの信仰と、それを家筋で伝える憑きもの筋を、島根・高知・大分などの村での調査事例と古記録をもとに取り上げ、アフリカやヨーロッパの邪術・妖術と比べて論じる。三章立てで、憑きものの正体と特色、憑きもの筋の形成と伝播、憑きものが村落社会で果たす働きを順に述べ、注とあとがきを付ける。