谷の奥の組に固まる犬神筋
どんな伝承か
高知県のある部落は谷に沿って南北六キロほど延びる細長い集落で、上・中・下の三つの組に分かれる。いちばん奥の上組は三十一戸のうち三十戸が犬神筋で、残る一戸も三代前に中組から移ってきた家である。中組の三十三戸には筋の家が一軒も無く、下組の三十五戸には筋と筋でない家が入り混じる。大分県のある部落でも、はずれの浦に筋の家が集まり、筋の人を浦の名で呼んだ。島根県安来市のある部落は五つの組に分かれ、奥の組は全戸が白、中ほどの三組は黒と灰色でほぼ占められ、黒の家は黒の多い組へ、白の家は白の多い組へ移るという。群馬の部落でもオサキモチの家は近くに固まっている。
原典より
* **第三章:憑きものの社会的意味*** 死霊が憑く* 祖霊と親族* 憑く憑かれるの関係* 社会的潤滑油* 家単位の憑きもの現象* イギリスの妖術との比較* 憑く人の特徴(日本)—— 日本の憑きもの(吉田禎吾・民俗・憑きもの研究・1972年(昭和47年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの(吉田禎吾・民俗・憑きもの研究・1972年(昭和47年))
『日本の憑きもの』は、吉田禎吾が一九七二年に著した人類学の研究書である。キツネ・イヌガミ・オサキなどの憑きもの信仰と、それを家筋で伝える憑きもの筋を、島根・高知・大分などの村での調査事例と古記録をもとに取り上げ、アフリカやヨーロッパの邪術・妖術と比べて論じる。三章立てで、憑きものの正体と特色、憑きもの筋の形成と伝播、憑きものが村落社会で果たす働きを順に述べ、注とあとがきを付ける。