結婚一か月で筋が知れ離縁された娘
どんな伝承か
高知県幡多郡のU部落で、一九六五年二月、著者たちが滞在していたときの出来事である。よその町の、イヌガミスジでない家に嫁いでいた二十三歳の娘が、結婚から一か月後にイヌガミスジの出だと分かり、婚家から離縁されてU部落の実家へ戻らなければならなくなった。この地方では縁談の際に仲立ちする人が相手の家筋を念入りに調べるのが常なので、結婚してから筋が知れるのはめずらしいという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの(吉田禎吾・民俗・憑きもの研究・1972年(昭和47年))
『日本の憑きもの』は、吉田禎吾が一九七二年に著した人類学の研究書である。キツネ・イヌガミ・オサキなどの憑きもの信仰と、それを家筋で伝える憑きもの筋を、島根・高知・大分などの村での調査事例と古記録をもとに取り上げ、アフリカやヨーロッパの邪術・妖術と比べて論じる。三章立てで、憑きものの正体と特色、憑きもの筋の形成と伝播、憑きものが村落社会で果たす働きを順に述べ、注とあとがきを付ける。