グスと呼ばれた異筋婚と縁を切られたYR氏
どんな伝承か
高知県幡多郡のU部落では、筋でない者と筋の者との結婚はめったになかった。明治時代、YR氏は親や親戚の反対を押し切り、イヌガミスジとされるT家の娘A子と夫婦になった。この土地では「いい方」と「悪い方」の結婚をグスと呼び、グスは悪い方、つまりイヌガミスジに数えられる。YR氏はすぐさま親や親戚から縁を切られ、生家のY家も、姉妹の嫁ぎ先のI家も、彼を締め出してT家との関係を断つことで筋になるのを免れた。YR氏は生涯どちらにも受け入れられず、寂しい一生を送ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの(吉田禎吾・民俗・憑きもの研究・1972年(昭和47年))
『日本の憑きもの』は、吉田禎吾が一九七二年に著した人類学の研究書である。キツネ・イヌガミ・オサキなどの憑きもの信仰と、それを家筋で伝える憑きもの筋を、島根・高知・大分などの村での調査事例と古記録をもとに取り上げ、アフリカやヨーロッパの邪術・妖術と比べて論じる。三章立てで、憑きものの正体と特色、憑きもの筋の形成と伝播、憑きものが村落社会で果たす働きを順に述べ、注とあとがきを付ける。