妻の生霊を連れ帰ろうとした夫
どんな伝承か
愛媛県西宇和郡F村のS部落は三、四十戸の小さな集落で、そのうちUという家が犬神筋とされていた。当主の母親が他村の犬神筋の家から嫁いできたためだという。この母親が部落の誰彼に憑くとうわさされ、病人が口走ったりすると、母親の夫、つまり当主の父親がその家へ出向き、「さあ一緒に家へ帰ろう」と、誰の目にも見えない妻の生霊を連れ戻そうとしたと伝えられている。
原典より
この母親なる人が部落のだれかれに憑くという噂がたち、病人が口走ったりするので、そうした事件が起こると、よくその母親なる人のつれ合い、つまり当主の父親がその家に行き、…—— 日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年))
『日本の憑きもの――俗信は今も生きている』は、石塚尊俊が昭和三十四年に著した研究書である。狐・犬神・蛇などの動物霊が人に憑くという俗信と、それを操るとされる家筋について、全国の伝承と近世以来の文書を集めて論じる。出雲・隠岐・豊後・土佐では筋の家の割合や縁組の偏りを調べ、憑きもの落としの行法や家の神とのつながりまでを七章で追っている。