隠岐島前の人狐筋の分布と起こり
どんな伝承か
著者は小脇清らの調査に加わり、隠岐島前の三島を村ごとに歩いて人狐筋とされる家の数を数え直した。村単位では西ノ島町が一・六パーセント、海士村が一三・二パーセント、知夫村が一・二パーセントにとどまるが、部落ごとに割り出すと四二パーセント、九七パーセントという集落もあるという。島前の特徴は、この筋がいつどこで始まったかが語り伝えられている点にある。海士村御波では、出雲の浦へモバを売りに行った家の先祖が値段をめぐって争って帰り、まもなく狂って死んだ。祈祷師に見てもらうと、相手が狐持ちで狐をけしかけられたのだといわれ、それが浦の狐持ちの始まりだと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年))
『日本の憑きもの――俗信は今も生きている』は、石塚尊俊が昭和三十四年に著した研究書である。狐・犬神・蛇などの動物霊が人に憑くという俗信と、それを操るとされる家筋について、全国の伝承と近世以来の文書を集めて論じる。出雲・隠岐・豊後・土佐では筋の家の割合や縁組の偏りを調べ、憑きもの落としの行法や家の神とのつながりまでを七章で追っている。