奥の部落ほど犬神筋が多い土佐の旧T村
どんな伝承か
高知県西南部の調査は昭和三十年の冬、桂井和雄の勧めで幡多郡の中部を選び、土地の中学校の校長と教員の協力で進められた。例に挙げる旧T村は今は隣の町に合わさった、太平洋に臨む細長い農村である。村全体の犬神筋は二割に満たないが、いちばん奥に近いB部落では三十戸のうち筋でない家が一戸しかなく、その下のC部落には筋の家が一戸もなく、次のD部落ではまた三割ほどが筋とされる。幡多郡は土佐の中でも言葉や習わしが古く残る所で、その由来は深いのかもしれないという。
原典より
その一番奥に近いB部落に、全三○戸中非憑きもの筋は一戸のみという状態の所がある。—— 日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年))
『日本の憑きもの――俗信は今も生きている』は、石塚尊俊が昭和三十四年に著した研究書である。狐・犬神・蛇などの動物霊が人に憑くという俗信と、それを操るとされる家筋について、全国の伝承と近世以来の文書を集めて論じる。出雲・隠岐・豊後・土佐では筋の家の割合や縁組の偏りを調べ、憑きもの落としの行法や家の神とのつながりまでを七章で追っている。