戦のたびに姿を消す出雲大社の白鳩
どんな伝承か
出雲大社には神の使いとされる数百羽の白鳩が棲み、社殿の棟に巣をかけ、参拝者にもよく馴れていた。この鳩は日清、日露の戦争のたびに姿を消し、戦が終わるとどこからともなく戻ってきたので、神の使いとして戦地へ赴き軍を守っているのだと噂されていた。大正三年八月の日独開戦でも鳩は次第に数を減らし、宣戦の詔勅が出た二十三日ごろには年老いた数羽が残るばかりとなって、参拝者は不思議がった。やがて青島が落ちて軍が凱旋すると、鳩もにわかに数を増やし、人々は鳩の凱旋だと囃し立てた。千家宮司は鷹や梟から鳩を守る方法を考えていたという。
原典より
出雲大社の神鳩が、開戦当時殆どその姿を隠したるより、青島に向け出征せるものなりなど取沙汰し居たりしが、…—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。