天狗に剣を授かり狂った若者
どんな伝承か
滋賀に剣術好きな若者がいた。ある時、用があって坂本へ出かける途中、目つきの鋭い僧と道連れになった。僧に剣術の名人を紹介すると誘われ、袖に包まれると身体が宙に浮き、けわしい高山の上の杉の大木に降り立った。僧こそが天狗であり、剣術の奥義を若者に授けた。若者は師の教えを守れず秘密を漏らしたため、天狗の怒りに触れて苦しんだという。郷里では十数日行方が知れず大騒ぎになったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。