油揚げで狐に仇を頼んだ女
どんな伝承か
島根県那賀郡から寄せられた報告に載る話。報告者の村でも指折りの資産家に恨みを抱いた女が、隣村で旅人にいたずらをすることで知られたトヤゾネの狐のもとへ油揚げを携えて行き、あの家を苦しめてほしいと頼んだ。するとその家の主婦に狐が憑き、ひどく苦しみはじめた。出雲大社で弓を引いてもらうなど手を尽くしたが、狐は、子が二、三匹いるうえ自分の体は犬に食われてしまって戻る所がないと言って離れず、以来その家は狐持ちと呼ばれるようになったという。報告の十数年前か、それより近いころの出来事とされる。
原典より
その家が十数年前、或いはそれよりもまだ近い頃かも知れぬが、その家に対して恨みを持った女が、隣村のトヤゾネの狐といって旅行の人等を困らせる悪戯で有名な狐に、油揚げを持って行って、…—— 怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。