託縄を握り神憑る大元神楽の託太夫
どんな伝承か
島根県邑智郡を中心とする地方では、何年に一度の大祭に大元神楽という神事があり、その一部として託太夫による託舞いが行われた。神前には竜頭に似せた大きな注連縄を柱の間に渡し、深夜になると託太夫を上座に据え、大勢の神職が周りを囲んで幣を持ち、歌い、祝詞を読む。やがて託太夫は顔色が変わって叫び声を上げ、床から跳び上がるので、腰抱き役がすかさず腰を抱きとめる。天蓋から下がる託縄を顎に当て両手を掛けさせ、伺いを立てる者が作柄や災難を問うと、託太夫は途切れ途切れに答える。尻餅をつけば神憑りが解け、縄を跳び越せば死ぬといわれた。
原典より
もし託太夫が尻餅をつけば神憑りの状態を失い、託綱をとび越せば死ぬといわれている。—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。