馬緤の裏山へ無言で送る田の神
どんな伝承か
奥能登では二月九日に田の神が田へ行き、一二月五日に田から家へ戻るとされ、ていねいな祭りがおこなわれる。ただしその作法は一様ではなく、堀一郎の報告によれば、西海村馬緤では田の神を家に迎えて御馳走したのち、ゴテと呼ばれる家の老主人が料理を持ち、家中の燈火を消して提灯をつけ、外へ出て家の裏山へ行く。そこで神体の石に甘酒をかけ、食物を供え、あとをも見ず無言で帰って来るという。これは田の神が山へ帰ることを明らかに示すもので、奥能登の中では特殊な形とされている。
原典より
堀一郎氏の報告の中にも、奥能登の西海村馬緤では、田の神を家に迎えて御馳走したのち、ゴテが料理を持ち、家中の燈火を消し、提灯をつけて外へ出て、家の裏山へ行き、神体の石に甘酒をかけ、食物を供え、…—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。