頭の口で飯を食う鬼の女房
どんな伝承か
欲深い男が、飯を食わない嫁が欲しいと探していると、口のない女が見つかり喜んで嫁にした。嫁は何も食べずによく働いたが、幾日か経つと食べ物が減っていく。ある夜、物音に目を覚ました男が台所をのぞくと、ざんばら髪の嫁が髪を掻き分け、頭のてっぺんに開いた大きな口へ握り飯を次々に放り込み、鍋いっぱいの飯をたちまち食い尽くしていた。逃げようとして戸にぶつかり見つかると、嫁は髪を振り乱して追ってきた。必死に走る男に神が声をかけ、蓬と菖蒲の蔭に隠れろと教えた。男は言われたとおりに隠れて命拾いをした。あの嫁は鬼だったのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
南郷村史 第5巻(民俗編)――昔話と伝説(南郷村(編)・南郷村史・自治体史(民俗))
福島県南郷村(奥会津)に語り継がれた方言による昔話三十一話と伝説十六話を網羅する。昔話はきのこの化け物・食わず女房・三枚のお札・笠地蔵・桃太郎・猿婿入り・ほととぎすの姉妹・人喰い鎮守・天女の羽衣・羅生門の鬼など、語り手(和泉田の五十嵐ヤスら各集落の伝承者)を明記して収める。