古町の避病院で聞こえた水音
どんな伝承か
古町の避病院では、昔チフスでたくさんの人が死んだ。そこへ手伝いに行っていたあき子という娘が、階下の流しのところで一人針仕事をしていると、どこからともなく人が来たように、隠れて水を使うバシャバシャという音がした。あんなに使っては汲み水もなくなるだろうにと思って廊下へ出て戸を開けてみたが、真っ暗で誰もおらず、水もそのままであった。ぞっとして先生を呼ぶと、先生も「私もヒタヒタと、何かが歩いて来るような音がすることがある」と言った。二階の女の先生はおまるを上げ、夜は便所へ下りて行かなかったという。浜野から行って死んだスミという娘の亡霊が、水を求めて出たのだろうといわれた。
原典より
私の叔母が先日(昭和五十七年・註/松谷)亡くなりまして、入院の初め頃は、死んだ者の顔が並んで崖の下に居て「来るな、来るな」と言っていて、自分は崖の上で必死につかまっていたと、夢の中の話をしていました。—— 現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。