鋸で極楽を切り取ってきた手下の仙太
どんな伝承か
志摩の波切の九鬼という海賊の子孫と名乗る中村屋豊秀は、追い剥ぎや人さらいを重ねながら小心者であった。旅の僧に死相が出ている、地獄へ落ちるしるしだと告げられ、極楽へ行きたいと毎日嘆く。あるじ思いの手下の仙太は極楽を盗んでこようと出掛け、門番に鑑札がなければ入れないと断られると、日が落ちてから塀を越え、鋸で二間四方の極楽を切り取って持ち帰った。しかし豊秀は既に息絶えていた。仙太は死骸を埋め、墓石の背後にその極楽の切絵を立てかけた。日が昇ると七彩の雲が浮かび天女が舞い、人々は掌を合わせたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ)
『私は幽霊を見た――現代怪談実話傑作選』は、東雅夫が編んだ怪談実話のアンソロジーで、メディアファクトリーのMF文庫ダ・ヴィンチの一冊である。平山蘆江・火野葦平・佐藤春夫・徳川夢声・遠藤周作・柴田錬三郎から石原慎太郎・新倉イワオ・稲川淳二まで、作家や文化人が自ら見聞きした幽霊や怪異を書いた文章を集める。目次には二十三篇と編者解説が並び、水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎の座談「怪談詮議」や中岡俊哉「イタコの謎を追う」の抄録も含む。